1月22日、核兵器禁止条約が締約国で順次発効している。
ヒロシマ・ナガサキで初めての核兵器が使用されて75年を過ぎてやっと人類が核兵器の危険性を認識し、行動を開始したということは人類の先行きについての暗い話題の多い中で唯一といっていい明るい話題だ。
そのような中で一番の当事者であるアメリカと日本が条約に参加していないことは残念なことだ。
日本政府はいろいろな事情があって、参加していないのだろうが、私は、日本人という枠を越えて人類の一員として今回の快挙を祝っている。
世界が新型コロナウイルスに対応するチャレンジに直面し続けるなか、広島と長崎への原爆投下から75年を迎え、世界で起きた出来事の破滅的な影響を思い起こさせます。
備えることができないのなら、食い止めるしかないのです。
核兵器根絶に向けて必要不可欠なステップとして、そして全ての核保有国の核兵器ゼロの達成を含めた地球規模の交渉を求めて、他国もこの動きに加わり、このランドマークな条約を広めることを要請します。このことが唯一、広島と長崎への原爆投下や、太平洋などでの核実験によって苦しめられた人たちに対する報い、レガシーとなるのです。
本日ここに、被爆75周年の広島市原爆死没者慰霊式並びに平和祈念式が挙行されるに当たり、原子爆弾の犠牲となられた数多くの方々の御霊(みたま)に対し、謹んで、哀悼の誠を捧(ささ)げます。
そして、今なお被爆の後遺症に苦しまれている方々に、心からお見舞いを申し上げます。
新型コロナウイルス感染症が世界を覆った今年、世界中の人々がこの試練に打ち勝つため、今まさに奮闘を続けています。
75年前、一発の原子爆弾により廃墟(はいきょ)と化しながらも、先人たちの努力によって見事に復興を遂げたこの美しい街を前にした時、現在の試練を乗り越える決意を新たにするとともに、改めて平和の尊さに思いを致しています。
広島と長崎で起きた惨禍、それによってもたらされた人々の苦しみは、二度と繰り返してはなりません。唯一の戦争被爆国として、「核兵器のない世界」の実現に向けた国際社会の努力を一歩一歩、着実に前に進めることは、我が国の変わらぬ使命です。
現在のように、厳しい安全保障環境や、核軍縮をめぐる国家間の立場の隔たりがある中では、各国が相互の関与や対話を通じて不信感を取り除き、共通の基盤の形成に向けた努力を重ねることが必要です。
特に本年は、被爆75年という節目の年であります。我が国は、非核三原則を堅持しつつ、立場の異なる国々の橋渡しに努め、各国の対話や行動を粘り強く促すことによって、核兵器のない世界の実現に向けた国際社会の取組をリードしてまいります。
本年、核兵器不拡散条約(NPT)が発効50周年を迎えました。同条約が国際的な核軍縮・不拡散体制を支える役割を果たし続けるためには、来るべきNPT運用検討会議を有意義な成果を収めるものとすることが重要です。我が国は、結束した取組の継続を各国に働きかけ、核軍縮に関する「賢人会議」の議論の成果を活用しながら、引き続き、積極的に貢献してまいります。
「核兵器のない世界」の実現に向けた確固たる歩みを支えるのは、世代や国境を越えて核兵器使用の惨禍やその非人道性を語り伝え、継承する取組です。我が国は、被爆者の方々と手を取り合って、被爆の実相への理解を促す努力を重ねてまいります。
被爆者の方々に対しましては、保健、医療、福祉にわたる支援の必要性をしっかりと受け止め、原爆症の認定について、できる限り迅速な審査を行うなど、高齢化が進む被爆者の方々に寄り添いながら、今後とも、総合的な援護施策を推進してまいります。
結びに、永遠の平和が祈られ続けている、ここ広島市において、核兵器のない世界と恒久平和の実現に向けて力を尽くすことをお誓い申し上げます。原子爆弾の犠牲となられた方々のご冥福と、ご遺族、被爆者の皆様、並びに、参列者、広島市民の皆様のご平安を祈念いたしまして、私の挨拶といたします。
“横畠内閣法制局長官は、…2016年3月18日の参院予算委員会で、「憲法上あらゆる種類の核兵器の使用がおよそ禁止されているというふうには考えていない」と発言したのです。(p11)
“樋口洋一東大名誉教授は、集団的自衛権は他衛権だが、他国を助けるのでもなく、他国の秩序をめちゃくちゃにしたのが現代史の事実」と発言しました。
“安全保障とは、岡崎(久彦)はゼロサムゲームだというのに対し、孫崎はそうではない、と主張する。孫崎は、戦略とはかつては「相手より優位に立つ手段」とされていたが、今では「相手の動きに応じて自分が最適の道を選択する手段」へと理解が深まっている、という(p128)
“もう一つの違いは、国際政治に対して岡崎が「リアリズム」の考えなのに対し孫崎は「複合的相互依存関係」の関係に立つことである。(p128-129)
“〇戦争とは、相手に自分の意志を強要させるための力の行使である。
〇この目的を確実に実施するために、敵を無力化しなければならない。これが軍事行動の本来の目的である。
〇戦争は政治的行為であるばかりでなく、本来、政策のための手段であり、政治交渉の継続である。
〇いかなる者も戦争によってなにかを達成したいか、どう戦争を遂行するかの考えなしに戦争を開始してはならない。(p133)