元ハーヴァード大学学長のデレック・ボックの「幸福の研究」を読んでいるとケインズが経済は手段だと言っていることを知ってちょっと驚いた。

幸福の研究―ハーバード元学長が教える幸福な社会
デレック・ボック
東洋経済新報社
2011-09-23


“経済の問題が、それがそうあるべきように、重要でなくなる時期はそう遠くない。そのときわれわれの心のうちは、…真の問題、つまり人生と人間関係の問題、想像と行動および宗教の問題によって占められるであろう。そうして人間は、永遠の問題に直面するだろう。差し迫る経済的心配事からの自由をどう活かすかという問題。すなわち科学技術と福利による資本蓄積によって人間が得た自由を賢明に、心地よく、善良に生きるために、いかに用いるかという問題に。(p87、ケインズ「説得論集」ケインズ全集第9巻)

マクロ経済学の創始者ケインズが今の世界の状況を見たとすれば、恵方巻を半分廃棄しながら経済成長を願う人々を見て、いかに失望することであろうか。

無題

ケインズの予想に反して、未だに人間が経済に縛られ経済成長していないと生きていけないかのような危機感に迫られているのは、手段を目的と勘違いしてしまったことが原因となっている。

「不公平条約の改定」が目的とした手段の「富国強兵政策」が日本の破壊を招き、その「敗戦の破壊からの復興」を目的とした手段の「経済成長」が目的化してしまっている。

もういいかげん、日本の現状をちゃんと見てほしい。人口が減少しているというのに、店には溢れんばかりの商品が並べられ、毎日毎日どれほどの食品や物品が廃棄されている。

経済成長しなければならない、という呪縛から逃れることができれば、その日から自分の周りになるものを見て、「人間が得た自由を賢明に、心地よく、善良に生きるために」動きだすことができるだろうと思う。