若い時から50年くらい愛聴してきたレコードにモーツアルトのフルート四重奏曲があります。

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クルト・レーデル(Fl)、オットー・ビューヒナー(Vn)、ゲオルク・シュミット(Va)、ヴィリ・シュネラー(Vc)という名手による演奏です。

モーツアルトが残したフルート四重奏曲全4曲が録音されており、いわばモーツアルトフルート四重奏曲全集です。

ジャケット裏面の大木正興氏による詳細な解説では、この様な演奏形態は西洋音楽全体でも珍しいらしく、

…これらの作品の様式が《弦楽四重奏曲》のような曲種と違って、後退し、やがて消滅してゆく前時代的様式の優美な趣味の最後の姿を、かげろうのようにとどめているという点でも、まとめてきいてみることはなかなか興味深いことである。

と、この録音の意義を説いている。

わたしもたまにLPで聴いていたが、何とYoutubeにアップされている。そして、またしてもDeucalion Projectさんです。

第1番ニ長調KV285



第2番 ト長調 KV285a



第3番 ハ長調 KV 追加171



第4番 イ長調 KV298
これは私がこの曲集で最も好きな音楽です。

この曲についての大木正興先生の解説では、

イ長調KV298だけはモーツアルトがさらに旅を進めてパリに滞在していた1778年の春から夏の間の作曲である。これは再び3楽章に帰っているが、作品の内容は完全に前時代的であり、ニ長調(第1番のこと)の豊かな精神的息吹きにくらべると、このジャンルの音楽が再び新しい装いをもって浮び出ることが、ほとんど不可能であることを、作曲者は痛感していたようにさえ見られるのである。

学術的でありながら、かつ文学的な解説です。レコードの解説にこれだけの音楽への愛情が溢れ出す文章を書く大木先生に感謝です。

それではモーツアルのトフルート四重奏曲第4番イ長調をお聴きください。