前回の記事で母の驚異の回復ぶりについて書いた。
百歳近い高齢者が、骨折からこれだけの回復をすることは珍しいに違いない。
目出度いことなので、お祝いをしようと思った。ただ、最近家でお客を招いての会食も珍しくないので、一度外食をしようと思った。(母は私が外食しないことが不満らしく、会う人には必ず私が外食をしないことを最悪の表情をしながら話す)
そこで以前から気になっていた町内の居酒屋に行くことにして、妻を誘う。
日程は11月21日(月)にした。平日とは言え人気店なので予約しておいた。
17時半の予約だが、妻にはその時刻に実家に来るように伝えていたら徒歩でやってきて、予定通りにお店に到着。
その名の通り「魚屋」である。
平日の17時半に早くも満席である。
中に入ると若い人たちで一杯である。これだけ若い人たちの集まりを見るのも久しい。
母は当然として60代のわれわれ夫婦も中では最高齢である。
座席は、背なしのスツールだが、お店は母用に背もたれ付きの椅子を用意してくれた。なかなか気の付くお店だ。評判の理由も分かる。
さっそくお酒を注文して母の全快を祝って乾杯。私と妻はキリンのラガー、母はヤカンの燗酒。
歯の悪い母には食べやすいように海鮮丼を頼んだが、メニューにないようで、特別仕様となった。時間もかかるらしい。
突き出しもエビ、カツオの角煮、ナス、枝豆といろどりも良くなかなか手が込んでいて美味。
初めての店で何が美味しいか分からないが、適当の頼む。最初に出てきたのがジャガイモの塩辛煮。
これなら母にも柔らかく食べやすい。
セイコガニ。よくこんな小さなセイコガニあったな、というほどだが、最近のカニの高値ではしかたなかろう。
妻には、私が子どもの頃には、トロ箱一杯、買ってきて卵だけ食べていたもんや、と話す。
絶品の蒸しアナゴ。
牡蠣フライ。ソースをかけた上にマヨネーズが乗るが、調味料過多だ。
カメの手なんぞという珍しいものがあったので頼んでみる。
ふんだんに磯の香が楽しめるが、要は固い貝。
その他なんやかんやで10品ほど頼んだが、後半になってやって母用の海鮮丼が出てくる。
美味しそうである。
母は燗酒も良く飲み、知らない間に盃が空になりヤカンから自分注いで飲んでいい調子だ。
最後にイカの天ぷらが出てきたが、前取れのイカということだったが、私には冷凍のモンゴイカにしか思えなかった。
なんやかんやでお腹が一杯になり、最後にお茶を頼む。
おお、すし屋の上がりで出てくるような魚の漢字がズラリと並んだ湯呑。ただし、すし屋のと違ってサイズが小さくてかわいい。
母が最後に「楽しかった」と言ったので驚いた。母の口からそんな言葉を聞いたのは初めてだ。
ところが次の日の朝、母からは特に会食についての言及がなく、いきなり「昨日はなんぼやった?」。
私がそのまま答えると、母「高いな」。
母が幸せになれない理由が良く分かる発言だった。