スペイン前国王のフアン・カルロス1世がサウジの高速鉄道の建設計画にからんだ不正疑惑を受けスペイン国外に亡命する意向であることが分かったという。
一般人であるゴーン氏の逃亡以上の驚きである。



記事によると、

前国王は息子である現国王フェリペ6世に宛てた書簡で「スペイン国民、国の機関、国王であるあなたに最も良く仕えるという信念に導かれ、今の時点でスペイン国外に亡命するという私の決断を知らせる」と述べた。…
スペイン最高裁は6月、前国王の法的責任を決めるための捜査を発表したが、前国王は免責特権により、退位後の行為にのみ責任が問われる。

という。

前国王は、亡命が「国民、国の機関、国王に最も良く仕える」(おそらく憲法の規定)を尊重した結論であることを表明している。
最高裁のコメントから国王は法的に免責されていることがわかる。ということは国王退位後は法的に一般の国民と同様の扱いとなることを示しているのだろう。
だから退位した以上、他の国民と同様に亡命も可能ということにもなるのだろう。

またサウジの高速鉄道の建設に関与していたかもしれないということは、スペインでは王室が政治に関与できるということを示しているのであろう。

以上のことを見ると、「国王」が機関であることが明らかになる。

このような経緯をふまえて、日本の憲法と皇室の関係を考えてみると、まるで法的整備が出来ていないことにあらためて気づきます。
憲法では天皇を「国民の象徴」と謳っているが、「象徴」とは何ぞやという議論も深まらず、それ以外の皇室の人々の扱いについては特段述べられていない。

また、憲法では天皇と摂政のみが「憲法を尊重し擁護する義務」を負うことを求めている。

第九十九条 天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。

そうすると、現在では天皇以外の皇室の人々には国民と同様の憲法で定める基本的人権を持つと考えられる。たとえば秋篠宮の眞子さんのご結婚に週刊誌などがごちゃごちゃ言っているが、その人々は眞子さんの人権を侵害しているということになります。

現憲法の天皇の規定は、昭和天皇を戦争責任から守り、天皇という制度を維持するという占領軍と当時の政権の観点が最重要だったので、本来であれば想定しておくべきであった観点については不十分なままに残されているのではなかろうか。

天皇の退位ですら規定がなく、特別立法で決めなければならなかったという明治憲法以来の日本の天皇制の問題はそのまま置き去りにされている。そんな曖昧な規定の中で「生身の」現天皇が立っておられるというのは思えば、異様な風景なのかもしれない。

「スペイン前国王の亡命」という驚くべき事態に遭遇して、以上のようなことをぼんやりと思ったのであった。